メランコリー

メランコリー

3FDAB93F-25B9-4B91-B0AF-E1F3CB305BD8.jpeg

巻物上部の背景の明暗を見ていくと、画面端は暗く、画面中央にいくに連れて明るくなっていて、グラデーションになっている。そのグラデーションの中に、微妙な色の境が見える。それを、赤と青の線で書き出した。

赤と青の線は、巻物が巻かれる回転に対して、対になる回転を作り、なおかつ画面上へ回転を広げていくよう。

画面右側の煙突から出る雲を境に、左右の空の色が変化している。左側の澄んだコバルトブルーに比べて右側の方が、黄身がかった青、ほとんど青緑になっている。 左側の青に比べて、澱んでいて、空の奥行きは少しだけ潰されて、固形物の表面にも見えてくる。 しかし、一点透視の消失点は画面右側の端にある。観者はここの前に立つのだが、左側の空に比べて、奥へと入りづらくなっている。この事は、「観者の身体とメタファーの紐付け過程」で書いた、観者に左に傾くポーズをとらせるための一つの機能かもしれない。 なんにせよ、観者の身体を右側に移動させておきつつも、観者が引き寄せられるのは、画面の右側の部分、女、巻物、そして澄んだ奥行きのあるコバルトブルーの空の方なのだ。